立命館の純真

【人間は変化し続ける】

 人間は日々刻々と変化している。日々の変化なしには生きることができず、成長もできないのが人間である。昨日より今日、今日より明日、人間は変化をともないながら成長する。昨日できたこと、できなかったことは過去のこと、今できることを積み重ねていこう。

【時間はコントロールできない】

 今、あなたたちに望むことは、試合に勝つことではない。中てようとすることでもない。普段の稽古どおりを求めるものでもない。これらは全て、未来のことや、過去の残影を意識しており、一番大切な今何をなすべきかを忘れた行為であり考えである。

試合中、ただでさえ短い時間の中で、何をなすべきかを考えたときに、人間が制御することが不可能な時間の制御、すなわち、未来や過去のことに何故か集中し、中てなければとか、抜けたらどうしようとか普段の稽古でしていない余計なことを頻繁に考えて、稽古どおりに射を行う持ち時間が足りなくなり、結果、不安だけが増大する。実は時間をいかに有効に使うかを競う真剣勝負でもある試合の場で、不安を増大させる無駄なことに集中する時間はない。腹をすえて、目の前の動作、次の動作のことのみ、丁寧に行い積み重ねていくことだけに集中してみないか。

 試合で緊張するのは当然のことである。緊張に身をゆだねよ。緊張に身を任せてよい。弓道は緊張で中りが減じることはない。問題は、短い時間の中で、普段やっていないこと、時間を飛び超えて色々なことをめまぐるしく考えて結果、不安だけが増大しパニックになることを緊張と勘違いし、緊張をネガティブに定義してしまうことにある。普段の稽古では、大部分の時間(たとえば全時間の8割)を目の前の動作、次の動作の積み上げに時間を割いている。試合ではどうか? 試合では、何故か多くの時間を不安に集中する(例えば5割以上)ことに割いていないか?もしそうであれば、正しい動作であるかどうかの確認は、稽古のときは8割以上行えても、試合のときは5割以下の割合でしか行えていないことになる。これでは当然結果は厳しいものとなる。時間はコントロールできない、未来や過去のことを試合のときに考えると解決する訳がないので精神的には不安定になる。自然に沸きあがる大きな緊張にきちんと身をゆだね、8割の意識を次の動作に集中する。結果の先取りは最悪だ。次は絶対勝つとか、リベンジするとか、中てるとか、負けないとか、言葉にするとそのことに囚われて卑屈になる。今できることだけを積み重ねよう。

【微笑の法則】

 試合は勝つこともあれば負けることもある。勝つは偶然、負けるは必然。勝ち負けは神様の采配にお任せすることとして、私たちが出来ることは、この瞬間この瞬間を懸命の努力で、自分の射をみんなの前で光り輝かせることだけなのだ。

 会に入っては、左右上下にしっかりのびあって、的心のみに意識を集中し放つことだけだ。毎回愚直に積み重ねよ。残身(心)をとれ。伸びあい詰めあった身体の開放感を全身で感じよ。そうすれば、中っても抜けても射場から控えに戻るころには、懸命にやった自分に誇りが持てるから、心地よい疲れとともに、穏やかな笑顔で姿勢正しく、堂々の姿勢でいることができる。

【立命館の純真】

 射手自らが、皆中してガッツポーズをしたり、抜けて顔をゆがめたり、離れの後に踊ってみせたり、泣いてみせたり等ということは、勝負にとらわれて懸命さが足りていないことを露呈する。したがって、その試合の勝ち負けによらず、その射手は未熟であり負けたことを示す。私たち立命館は、ただひたすらに平正審固、結果については穏やかに、満面の笑顔で、姿勢正しく堂々と、神様のきまぐれにただただ感謝して、全てを受けとめることとする。私たち立命館の純真は、たとえ全員が抜いたとしても、穏やかな笑顔で姿勢正しく、全ての因果を他に求めることなく、堂々と立ち居振舞うことのできる人間を多く育てることにある。